Net Pocco

  • 獣医師よもやま話
  • 会報誌「Pocco」
  • 犬図鑑
  • 特集コラム
  • 愛犬悩み相談辞典
ドッグフード Home > Net Pocco > ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 > 第5話 誘惑に負けない

ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第5話「誘惑に負けない」

休日の午後、立ち寄ったカフェで見かけた光景です。
テラス席でお母さんと娘さん夫婦と思しき3人連れの方が3時のお茶を楽しんでいました。
お母さん、娘さん、膝にはそれぞれワンちゃんを乗せています。

お母さんはアイシング(砂糖衣)のたっぷりかかったデニッシュを大きめのひと口大にちぎったと思ったら、自分で食べる前に、膝に乗せているシーズーちゃんに食べさせました。娘さんの膝に乗っていたミニチュア・ダックスフントちゃんがその様子を『あ〜〜〜!』と今にも叫び出しそうな表情で見つめています。
その後、お母さんは娘さんのダックスちゃんに「あなたも、食べる?」と食べさせることもなく、また、娘さん自身も自分の膝の上のワンちゃんに何かを食べさせることはありませんでした。そしてダックスちゃんは娘さんに向かっておやつを催促するわけでもなく、シーズーちゃんのデニッシュを横取りしようとするわけでもなく、ただただ、シーズーちゃんがデニッシュを貰うたびに、驚愕の表情を見せるのでした。

これぞしつけのなせる業!

想像するに、母娘で事前にきちんと取り決めをしているのでしょうね。
「ママが、ママのワンちゃんにヒトの食べ物をあげるのは、それはママの自由だけど、私は私のワンコにはヒトの食べ物を絶対にあげたくないから、私のワンコには人の食べ物や食事の時以外にドッグフードをあげないでね」
「あらまぁ、それはちょっとかわいそうな気もするけど、あなたがそう言うなら仕方がないわね」
こんな感じのやり取りがあったのではないでしょうか。きちんとルールを決めて、飼い主さん自身が例外を作ることなくしっかりそのルールを守っていれば、ワンちゃんは忠実にそのルール通りに行動することができるようになります。

上手にしつけて生活を快適に

前述の内容、私の勝手な想像と思っている読者の方きっとたくさんいることでしょう。でも、しつけの力ってすごいんですよ。以前、情報誌「Pocco」でしつけとコラボする愛犬家住宅の記事で紹介しました。
ワンちゃんに入ってきてもらいたくない場所に仕切り(ベビーフェンス様等)を付けるというのが一般的に行われていますが、それだとちょっと鬱陶しかったりする場合もあります。侵入禁止エリアに段差をつけ、(その段差はワンちゃんの能力的には越えられるものであっても)ここからは入ってはいけないとしつけることで、ワンちゃんの立ち入りを制限するというものでした。上手にしつければ不可能ではありません。

イメージ1

私自身が誘惑に負けて…

我が家の場合、腰丈の仕切りを付けていましたが、子犬のころからワンコが畳の部屋には入らないようしつけていました。うちの犬はボーダーコリーなので、成犬になった運動能力から見て、その高さの仕切りは、どうも飛び越えられそうな気がしていました。
ある日、つい誘惑に負けて「ジャンプ!」と声をかけたところ、案の定軽々と飛び越え、得意げに私の顔を見上げます。それはそうでしょう、ドッグランでハードルを飛び越えればたくさん褒めてもらえるのですから、ジャンプのかけ声で飛び越えれば、当然褒めてもらえるものと思っていることでしょう。
私の指示通り行動したワンコを叱るわけにはいきません。一応褒めまして、その後すぐに、素材の違う少し高い仕切りに取り替えました。(同じ仕切りのままで、飛び越えてはいけないと再び教えるのは、ワンコに気の毒なので)

イメージ2
自業自得で不便な毎日

畳の部屋に入らなかったのは仕切りを越えられなかったからではなく、飼い主の決めたルールに従って、越えなかったのです。ワンコが約束を律儀に守っていたのに、私がそれを破って台無しにしてしまいました。

犬は飼い主に対して忠実な動物です。教えたことは、律儀に守ります。もしも、あの母娘が、今日は外出だからとおやつを与えていたのなら、あのダックスちゃんは、シーズーちゃんがデニッシュを貰う様子を見て驚いたりせず、自分にも『ちょうだい!』と騒いでいたことでしょう。しつけが上手くいかないのは、実は飼い主さんが、自分の都合で例外を作ってしまうことに起因する場合が往々にしてあります。まずは飼い主さんが自らを律することからしつけは始まります。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

バックナンバー