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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第6話「リードは命綱」

お散歩の途中、小さなワンちゃんが、挨拶しにトコトコ寄ってきてくれました。先方の飼い主さんと、お互い愛犬のリードを握りながら軽く会釈をしたとき、動物病院に勤めていた頃に遭遇したひとつの出来事が脳裏に浮かびました。

午前の診療が終わろうとしたとき、小型犬を腕に抱えた中年の女性の飼い主さんが涙目でやってきました。開口一番「大型犬に咬まれたんです」。涙ながらに続けるには、単純にひと口ガブリと咬まれたのではなく、首根っこに喰らいつかれぶんぶんと左右に振り回された挙句放り投げられたそうなんです。さぞかし怖かったことと思います。

リードは付けていましたか

どうしてそんなことになったのか、もう少し事情を伺いました。近所の公園でリードを外して遊ばせていたところ(この公園は、犬を連れて入ることはできてもオフリードは禁止となっています)、近くを通りかかった大型犬(こちらはしっかりリード付)を見かけるや、そちらに向かって突進していったそうなんです。どちらの飼い主さんも制御する暇もなく、小さなワンちゃんが大きなワンちゃんの前に踊り出た瞬間、あっと言う間に事件は起きたそうです。
聞き取った話を分析してみるに、大型犬は、向かって来た犬を敵とみてケンカモードで咬み付いたというのではなさそうで、突然目の前に躍り出た動くものを反射的に咥えてしまったのでしょう。ボール遊びと同じ感覚といえます。
口には出しませんでしたが『リードさえ付けていれば…』、そのとき居合わせたスタッフ全員がそう思ったに違いありません。

被害者にも加害者にも

このケースでは、犬対犬だったので、小型犬の飼い主さんは、なんとなく大型犬に一方的に襲われたように考えている節がありましたが、もしも相手が自動車だったらどうでしょう、きっとオフリードにしていたことを純粋に後悔したと思います。
被害者になるだけではありません。たとえ小型犬であっても、犬の嫌いな人から見れば、とても怖い存在です。オフリードの犬が近づいてきたら、驚いて転んでけがをしてしまうことはあり得ます。

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犬好きにとって、どうも『犬が怖い』という感覚はよく理解できないため、ついつい忘れてしまいがちになりますが、犬を飼育するに当たっては、『嫌い・怖い』と思う人の気持ちを絶えず意識する必要があると考えます。犬が嫌いではなくてもお年寄りや子供のように足元がおぼつかない人であれば、足元に寄って来たことでバランスを崩して転ぶこともあります。こういった場合、ワンちゃんが加害者になってしまいますね。(法的には飼い主さんが責任を負わなければなりません)

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窮屈なのはだれ?

飼い主さんの中には、窮屈でかわいそうだからと、愛犬にリードを付けたがらない方を時折見かけますが、窮屈と思っているのは本当に愛犬でしょうか? 子犬の頃から、リードを付け、散歩に出るときは飼い主さんの脇について歩く訓練をさせていれば、愛犬にとってはそれが普通のことになり、引っ張ったり引っ張られたりすることもなく快適に散歩ができます。十分な訓練もせず、させたいように散歩していると、飼い主さんが引っ張られるので、飼い主さん自身がリードを持っていることが苦痛になりオフリードにしたいと思うようになるのではないでしょうか。
制御の利かないワンちゃんをオフリードにしたら、どうなるでしょう。前述のような事故が起きてしまうのです。

ここで、ちょっと発想の転換をしてみましょう。リードを、愛犬の自由を奪う窮屈なものと考えないでください。リードはあなたの大切な愛犬を諸々の危険から守る『命綱』と考えてください。 もしもあなたの大切な人が、高所作業をする際、「命綱を付けていると動きづらいし、作業には慣れているから、命綱いらない」と言ったら、「はい、そうですね」とすんなり通しますか。そうではないと思います。泣いて頼んででも付けてもらいますよね。

愛犬にとってのリードは、愛犬のための、そして周囲の人のための命綱です。家の外では必ず付けて、しっかり離さず握ってください。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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