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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第7話「犬を叩く、あり? なし?」

愛犬を厳しくしつけようとするあまり、ついつい叩いてしまうことはありませんか? 叩いて、しつけは上手く行きましたか? 私は、犬を叩くのは『百害あって一利なし』な行為だと思っています。

子どもの頃(獣医師になるなんて夢にも思っていない頃です)、大好きだった伯母の家に遊びに行ったときの出来事です。その家のチワワが何かに興奮して激しく吠えたてたので、伯母が「いけない」と言いながら、軽くそのワンコのおでこを叩いてたしなめたところ、そのワンコは「キャン」と鳴いてそれから右前脚を床に着けなくなってしまいました。初めのうちは「犬も歳長けてくると、こういう演技をするようになるのね」などと伯母と母は笑っていましたが、ワンコはいつまで経ってもその脚を下ろそうとせず、しょんぼりしたままです。

犬を叩くと何が起きる?

飼い主の伯母は、さすがに『これは、おかしい』と思い、ワンコを動物病院に連れて行きました。やっと帰って来たと思ったら、今度は伯母がしょんぼりしています。ワンコは骨折していたそうなんです。当のワンコも痛いでしょうが、伯母にとっても精神的にもおサイフ的にも痛い出来事だったことと思います。これは特別な出来事でなく、小型犬なら叩いた拍子にケガをしてしまうことは普通に起こりえることだと思います。
中型犬以上の屈強なワンコは、叩いたところでびくともしなかったとしても、その時愛犬は飼い主さんに対して不信感いっぱいの悲しい視線を送っていることでしょう。もしかしたら、攻撃的な行動に出るかもしれません。犬を叩くのはリスクが高い行為なのです。

『しつけの罰=叩く』ではありません

しつけの際に愛犬を叩くという飼い主さんが、ときにいます。「トレーナーさんから、『叩いてしつけなさい』と言われた」というようなことを耳にすることがあります。そういう飼い主さんはたいてい、直したい愛犬の問題行動(例えば、散歩中にすれ違う犬に飛びつこうとする、ドアチャイムに吠え続ける、などなど)を愛犬がした後、ちょっと(あるいは、かなり)間をおいて叩いているように思えます。多分それだと、トレーナーさんが「叩いてしつけ」と言っていたとしても、意図していたのとは違うやり方になっていると思います。私の想像の域を出ませんが、『叩く』と 『罰』がどこかで伝言ゲーム的にすり替わっているように思えてなりません。

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飼い主さんの手はやさしい手

犬のしつけの基本は『ほめて育てる』です。つまり、Aの行動をするといいことが起きる、Bの行動をするといいことは起きない、じゃあAの行動をしよう!と犬に覚えさせるのです。例えば、ドアチャイムが鳴ったとき、黙ってハウスに入るとおやつが貰える、吠えると貰えない→チャイムがなったらハウスに入ろう!とワンちゃんは覚えていくわけなんですね。ほめてしつける方が飼い主さんもワンちゃんも楽しいと思います。
ただ、場合によって問題行動を止めさせたいとき『罰』を利用することがあります。この場合は、ワンちゃんがCをしようとすると、嫌なこと(『罰』ですね)が起きるとワンちゃんに教えることで、問題行動をさせないようにします。例えば、散歩中、すれ違う犬に飛びつこうとしたらリードが強く引かれるという嫌なことが起きると、ワンちゃんはリードが引かれるとイヤなので飛びつきを止めることになります。リードが強く引かれ行動が制限されるというのが、飛びつこうとしたことへの『罰』なんです。『罰』はタイミングがとても重要なんです。問題行動をしようとしたまさにその時、『罰』が起こらないと、ワンちゃんは問題行動と罰の関係を結びつけることができません。
罰を叩くことにした場合、飼い主さんとしては、間髪を入れず叩いているつもりでしょうが、実際のところ叩くタイミングが遅く、適切な罰になっていないことがしつけの失敗の原因となります。タイミングを逃して叩いても罰にはならず、それは虐待にしかなりません。

万が一、タイミングよく罰として叩く自信があっても、飼い主さんの手は罰を与える道具にしないで欲しいなぁと思っています。(どんな罰でも、その源はワンちゃんに知られないようにするのがしつけのポイントです。手で叩くというのは、罰の源が飼い主さんだとバレてしまう点でもいい方法とは言えません)飼い主さんが何気なく手を動かしただけで愛犬が怯えるとしたら、それは悲し過ぎます。愛犬にとって飼い主さんの手は、いつもいい子いい子してくれる、ときにおいしいものをくれる、そして暖かく抱っこしてくれるやさしい手であってください。

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田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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