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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第9話「家族みんなが、家族の一員です」

愛犬は家族の一員という意識はあるのに、従順で、言葉を話せない家族に対して、理不尽な態度をとってしまったことはありませんか。

ちょっと前のことになりますが、4歳になるメスのラブラドール・レトリーバーを飼っている友人(男性)のブログにこんな書き込みを目にしました。
『深夜に帰宅し、サクラ(仮名)の散歩に行こうとしたら、日中の雨で、エサ入れの中の食べ残しのフードが水浸しに。小屋の中に入れておかなかった自分も悪いのだけど、食べ残したことが頭にきて、怒鳴りながらエサごとサクラにぶちまけてしまった。幸いほとんど水はかからなかったけど、サクラとしては何で怒られたのか分からず、遠くからおどおどしてうつ伏せでこちらをじっと見上げていた。(後略)』
といった記述のあとには、感情的に叱ってしまったことを悔いる内容が綴られていました。
これを書いた友人は医療関係者で健康には人一倍注意深いはずなのに、なんで自分の飼犬にはこんなことをしてしまうのかと頭に一気に血が上ってしまいました。そして、カッカした感情のまま、よく考えもせず、次のようなメールを送りました。

『100%飼い主が悪いのに、水ぶちまけられてサクラちゃんかわいそう。
食べ残しを見つけたときに、叱るより先に、なぜ健康状態など原因について考えてあげなかったのでしょうか。(中略)
犬は、生活のほとんどを飼い主にゆだねています。
犬を『叱った』と言えば聞こえはいいですが、犬が問題を起こしたとき、その原因をたどっていけば必ず飼い主に行きつきます。感情的に、犬を叱る前になぜそうなったのかを考えて欲しいです』

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『叱る』の裏に潜む闇

と、まあ、私の送ったメールの内容は正論なんですが、時に正論をかざすことが必ずしも適切ではないということが私の頭を過りました。彼は健康の専門家なので体の異状が些細な変化から現れるということは百も承知であること、そして感情的に叱ってしまったことを後悔していることから、犬の飼育に無知であるが故に愛犬にそのような態度をとったわけではなく、多分、彼自身の内面的事情で一時の感情が押さえられなくて叱ってしまったと推察されます。
ストレスに満ちあふれた現代、飼い主さんご自身がストレスを抱えてしまうこともあるかと思います。だからと言って、そのストレスをそのまま愛犬にぶつけてしまうのは、当然ながらよろしくありません。

犬もストレスには弱い

家庭という限られた環境でのみ生活している愛犬は外に「はけ口」がないので、もしも飼い主さんからストレスを向けられると自分の中にどんどん溜め込んでいくことになってしまいます。犬はストレスに強い動物というわけではありませんので、そのようにどんどんストレスを溜め込んでいくと、ついには、落ち着きなくいつも吠える、自分の体をいつも舐め続ける・血が出るほど咬み崩す、などの問題行動や自傷行動を起こすようになります。

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ストレスを向けないために

家庭の中で一番弱い立場にいる愛犬に家族のストレスを向けない工夫が必要になります。
いつも温和なお父さんが愛犬に声を荒げたりした場合、「犬に当たらないで」と感情的に止めるのではなく、なにかストレスが溜まっていないか思いやり、愛犬からそっと離して、お茶を飲んだり、お風呂に入ったり、ちょっと昼寝をしたりと、気持ちの休まる何かをさせてあげてはいかがでしょう。(私自身も、前述のケースでは、飼育についてあれこれ指図するメールではなく、いたわりのメールを送るべきだったと反省しています)お子さんがいつもはかわいがっている愛犬に意地悪したりしていたら(あるいは、愛犬がお子さんのそばに寄りつかなくなったということがあれば、ご家族の見えない所で、お子さんが愛犬に当たっているかもしれません)、例えば、学校で何かなかったか気にかけてあげてください。お母さんが愛犬にツンケンしているようだったら、ちょっとお皿洗いなどの家事を手伝ってあげてはいかがでしょう。愛犬も含めて、ご家族間でいたわり合うことが大切です。

愛犬を思いやる心

愛犬にストレスをぶつけそうになったときは、大きく深呼吸をして三つ数えてください。その間に、理不尽に叱られて悲しそうな顔をする愛犬を想像してみてください。怒りが消えて、きっと愛おしさがこみ上げてくることでしょう。
家庭という限られた環境でのみ暮らしている愛犬にとって、ご家族が世界のすべてと言っても過言ではありません。ご家族の皆さんが心穏やかであることが、愛犬の幸せの基本となります。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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