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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第12話 運動機能の維持!ということ

愛犬が高齢期を迎える頃にさしかかると、飼い主さんは愛犬の動きにぎこちなさを感じるような場面に遭遇し始めます。愛犬が動けなくなってはかわいそうなので、飼い主さんとしてはいろいろな対策を講じるでしょうが、その方法を間違えるとかえって逆効果な場合もあります。

我が家のワンコも十歳を過ぎました。顔がかなり白っぽくなり、歳をとったことは外見からも否めません。幼犬の頃から仲良くしてもらっているお散歩友達のワンコ達も同様です。その古仲間の一頭の飼い主さんと久しぶりにおしゃべりしました。
「最近は少し足腰衰えて、二階に上げるのが大変なの」
「二階に上がらなければならないんですか?」
「寝室が二階にあるのよ」
「寝室は二階じゃなきゃダメなんですか」
「獣医さんがなるべく動かした方がいいっておっしゃるので、今までのまま頑張っているの」
そのときは、その場で別れました。その友達のワンちゃんは、35sはあるだろうゴールデン・レトリーバー、飼い主であるお友達は小柄でスリムな熟年マダム。階段の途中で、ワンちゃんがバランスを崩したらワンちゃんはもとよりお友達も、階段からころげ落ちてしまわないかとハラハラした思いで、歩き去るひとりと一頭の後姿を見送りました。

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現状維持頑張る派へ

毎日、同じことを続けることで現状の運動機能を維持していこうという考え方は基本的には間違っていません。しかし、どんなに頑張っても老化による体の衰えというのは進んでいきます。時の流れによって、愛犬に頑張らせてもできなくなってしまうことが出てきてしまうのです。では愛犬の衰えに対してどう対処していくか。例えば、何がなんでも今まで通りやらせて克服しようとします。衰えがある程度のレベルまでなら表面上はなんとかできるでしょう。でも、そのことが実は体に対して無理を強いていることになり、結果として衰えを進める原因になってしまう場合があります。
今まで通りやらせることで衰えを克服させようとお考えになったそのとき、思い出して欲しいのは、愛犬は必ずどこかで飼い主さんを追い越して歳をとっていくということ。飼い主さんご自身が未体験の境地に愛犬が先に踏み込んでいくということなのです。なので、頑張れ!頑張れ!ばかりではなく、できないということをまず受け入れてあげましょう。

視点を変えてみる

愛犬にあることをさせると、ぎこちなく動いたり(関節や筋肉が固くなりスムーズに動かないという他に、痛みを感じている場合があります)、すぐ疲れてしまったり、その動作自体を自発的にしなくなったりしたら、それを無理にさせるのは控えましょう。その代りに負荷の少ない(負担の軽い)他の動作に変えます。
例えば、散歩のとき、玄関でリードを付けるときと門を出るとき、飼い犬に『おすわり』をさせていたとします。(これは、大好きな散歩に行けることで愛犬が興奮してリードも付けずに飛び出して行ってしまわないようにするための儀式です)座る際に動きにぎこちなさを感じることがあったら、座らせるのをやめて、代わりに玄関と門ではその場で立ち止まらせるようにしましょう。愛犬は自分が座りたいときには座るんだからさせてもいいじゃない、と思うかもしれませんが、明らかに負担に感じていることをさせて、関節に不要な負担をかけることはありません。代用の行為があればそれに差し替えていけばいいのです。
つまり、できないことをさせるのではなく、できることをさせればいいのです。

お膳立てを変える

動作自体を負荷の少ないものに変えることのできない場合は、しやすい環境を整えてあげましょう。例えば前述のラブラドールくんの場合、寝室を一階にすることが一番安全な方法です。それが不可能な場合は、階段を使わない代替案はどんなものがあるかまず考えてみます。緩やかなスロープ? リフト? 実際にこれらのものに変えるのはお金がすごくかかってしまうかもしれません。でも、そこで諦めたらそれで終わりです。こんな感じのもの、なんとかできないかなと、ご自宅の間取りなどを踏まえて思案してみてください。どこかに折り合える点が見つけられることでしょう。

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どんなに努力しても運動機能は必ず落ちてきます。その流れを緩やかにすることはできたとしても、決して止めることはできません。運動機能の維持とは、ピークのときの運動機能をそのまま維持させようということではありません。たとえ高齢になって衰えてきてもそのときそのときの状況にあった活動ができるよう対策を取ることが運動機能の維持なのです。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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