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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第14話 犬だって痛いんです

私が子どもの頃は、「犬は痛さを感じない」とか「痛い所は舐めて治す」などという荒っぽいことが普通に言われていました。最近ではそんなことを信じている人は、少なくとも実際に犬を飼っている飼い主さんには皆無でしょう。それにも関わらず、愛犬の痛みを見過ごしてしまう飼い主さんは実は決して少なくありません。

痛みは自覚症状ですので痛みそのものは当事者にしか分かりません。そして、犬は痛みを感じていることを周囲に感づかれないように振る舞う習性があります。これは、野生時代の名残です。痛みという弱みがあることを周囲に知られてしまうことは、補食対象と見られることになるからです。つまり、うっかり痛がったりしたら、他の動物に食べられちゃうってことです。

自分にしか感じることのできない『痛み』という感覚を、更に感じていることを隠してしまいますので、飼い主さんが愛犬の痛みを見逃してしまうのも無理からぬことです。

「変なクセ」と片付けない

愛犬が痛みを感じているとき、実は飼い主さんは愛犬の様子から『なにかおかしい』と直感的に感じています。ところが、一般の飼い主さんは自分の愛犬以外の犬をじっくり観察することなどないでしょうから、愛犬の様子を見て『なにかおかしい』と感じても、次の瞬間『犬ってこんなモノなんだろうな』と思ってしまったり、犬好きで他のワンちゃんをある程度見ている飼い主さんでも、『うちの子の変なクセ』で済ませてしまう場合が多々あります。
『なにかおかしい』と思えるような様子でも、それが飼い主さんの頭の中で『痛み』に結びつかないんですね。慢性痛の場合、いつも痛いのでワンちゃんは痛いながらもなんとかやり過ごして生活する術を身につけますから、飼い主さんが痛みに気がつかない傾向が強くなります。

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痛みの兆候を見逃さない

愛犬の示す次のような『なにかおかしい』は痛みの兆候かもしれません。

●散歩に行きたがらなくなった
●段差の上り下りを嫌がるようになった
●あまり動かなくなった
●ソファーに乗りたがらなくなった
●立ち上がるのがつらそうに見える
●元気がなくなったように見える
●飼い主さんと遊びたがらなくなった
●尾を下げていることが多くなった
●歩く様子が他の犬と異なる
●寝ている時間のパターンが変わった

このような兆候が見受けられたら、時間をおかずに動物病院での診察を受けることをお勧めします。もう少し様子を見ようと、愛犬の様子を四六時中見張るように観察したとすれば、愛犬はそれを感じとって、より一層痛みを隠そうとしてしまうかもしれません。そうすることで、状況は悪化してしまう場合があります。診断スキルのある獣医師でなければ、痛みの正体を見つけることはできません。

舐めても、治らない

犬は舐めて治す、というのも真っ赤なウソで、舐めるより他に方法がないので、仕方なく痛い所を舐めているのです。先に挙げた、痛みの兆候の中に、『舐める』というのは入っていませんが、犬は痛かったり痒かったりなど不快な部分があるとそこを舐めます。(あるいは、精神が不安定なときも体の一部分を舐め続けたりすることがあります)舐めすぎるとその部分に皮膚炎を起こします。愛犬が体の一部を舐め続けている場合は、「舐めて治す」などとは決して思わず、やはりなるべく早い時期に動物病院で診察を受けさせることをお勧めします。皮膚炎が起きるまで舐め崩してしまうと、愛犬はその分余計につらい思いをしますし、そもそもの原因も見つけづらくなります。

飼い主さんは、愛犬の変化にとてもよく気がついています。ただ、それがどういうことを意味するのかを判断するのは、獣医師に任せた方がいいでしょう。あまり長い間様子を見ていると、比較的治療効果の上がりやすい初期の治療の機会を逸してしまうかもしれません。あるいは、毎日見ているうちに、初めは『なにかおかしい』と思っていたことが見慣れてしまい普通のことに思えてしまうと、愛犬は治療を受けることすらできなくなってしまいます。 愛犬の様子『なにかおかしい』と感じたら、その直感を信じてなるべく早く動物病院で診察を受けさせましょう。

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田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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