Net Pocco

  • 獣医師よもやま話
  • 会報誌「Pocco」
  • 犬図鑑
  • 特集コラム
  • 愛犬悩み相談辞典
ドッグフード Home > Net Pocco > ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 > 第20話 春先の予防にまつわるモヤモヤ感

ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第20話 春先の予防にまつわるモヤモヤ感

「愛犬への健康ケア、決してケチるつもりはないのだけど…」春先の予防関係にかかる出費にちょっとため息が出てしまう、そんな飼い主さんへ。

ゴールデンウィークの頃の話です。夕方、買い物帰りに通りかかった公園でワンちゃんを連れた奥様方が立ち話をしていました。皆様、お腹立ちなのか少々声高に話されていたので、聞くとはなしにお話の内容が聞こえてきました。
「春って、お金がかかるわ」
「うちは大型犬だから、金額が大きいのよ」
「うちは2匹だから倍よ」と。
どうやら春先のワンちゃんの予防に関わる出費がかさむことについての意見交換会のようです。

イメージ1
春先に集中してしまう現実

ワンちゃんの予防は春先に集中する傾向があります。狂犬病の予防接種は4月から6月の間に接種することが決められています。フィラリア症やノミ・ダニといった昆虫が関わるものの予防は虫が活動する時期と連動しますので、春先から始めることになります。フィラリアの予防は通年予防をしている場合を除いては、その年の予防を始める前に血液検査をしなければなりません。その際、「採血するのだから、ちょっと多めに血液を取って健康診断をしましょう」とたいていの動物病院で勧められることでしょう。春先は狂犬病予防接種、フィラリア予防開始前の血液検査、健康診断での血液検査、予防薬、これらの代金が一気にかかるので、大型犬や複数のワンちゃんを飼っている飼い主さんの負担が決して小額ではないことは想像に難くありません。

イメージ2
予防に対する疑いのまなこ

予防というのは、やった甲斐があるのかないのかいまひとつ実感がないのが、飼い主さんがお金のかけ甲斐を感じない要因かもしれませんね。例えば、ワンちゃんがケガをして痛がっているのを、手術をして痛みから解放されれば、飼い主さんは治療費を払うことになんの違和感も感じないことでしょう。でも、予防の場合は『もしかしたら、予防なんてしなくてもそんな病気になんてかからないんじゃないか』とか、『そもそも予防しましょうという病気が存在しないんじゃないか』とそんな疑いの念を抱く余地がなくはないところに、負担感を感じさせる遠因があるのではないでしょうか。

予防の意味を理解する

「予防をしなくてもその病気にはかからないかもしれない」、これは確率で考えると確かにそうです。では、予防しなかったとして、その病気にかかってしまったとします。現在、広く予防が行われている疾患は、一度かかってしまうとこれはという有効な治療方法がなく命にかかわる場合のあるものです。運良く回復したとしても、その間ワンちゃんは辛い思いをしますし、回復しても元のような体には戻れないかもしれません。また、飼い主さんにとっても治療はワンちゃんを動物病院に連れて行ったり看病したりと手間と時間が、そしてその費用という相当の負担がかかります。そして言うまでもなく、心配でならない時間を過ごさなくてはなりません。病気になったあとにかかる治療費等々に比べれば予防の費用は格段に少ないです。(ただし、どの予防も百パーセントということはありません。また、場合によっては副反応というワンちゃんに害をなす反応が出る場合があります。)

個々だけでなく集団免疫という概念

予防で防ぐ病気にかかっているワンちゃんを見たことがないという飼い主さんがほとんどかと思います。じつはこれ、多くのワンちゃんがキチンと予防をしていることでその病気を封じ込めているという証しなんですね。これを集団免疫といいます。でも、安心して予防をする人が減ると、病気の方が勢力を増して爆発的な感染を起こしてしまう可能性が大きくなってしまうんです。予防を続けることの意味はこんなところにもあります。

イメージ3

予防の意義をよく理解すると、出費の必要性を認識していただけると思います。ただ、認識したからといって実際にかかる費用が減るわけではないので、その点については毎月積み立てていくことをお勧めします。この春にかかった予防の費用を元に来年分を今から貯金するのです。今、7月ですので7月から来年の3月までの9ヶ月間で今年かかった費用を割ります。その金額を毎月貯めることをぜひお始めください。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

バックナンバー