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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第22話 うちの子、普通?普通じゃない?

私のワンちゃんのことは私が一番よく知っている。確かに!飼い主さんがご自身のワンちゃんについては一番よく知っています。ただ、一般的な犬については案外知らない部分も多いものです。

「マドレーヌ焼いたんだけど、お茶しにいらっしゃいませんか」と犬友さんに誘われたので、いそいそと出かけました。お宅に伺うと、「今日は別のお友達もお呼びしているのだけど、よろしいかしら」と言われました。地域に古くからお住まいで社交的な人柄からお友達もたくさんいらっしゃる方ですので、なんの違和感もなく「いいですよ」とお返事しました。ほどなくドアベルが鳴り、その三十代半ばと思われる女性がやって来ました。首から下げたスリングバッグからはミニチュア・ダックスフンドが顔をのぞかせています。顔に比べバッグが大きく膨らんでいるので、随分太っているワンちゃんだなと思いました。

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マイワールドという迷宮

彼女がスリングバッグからワンちゃんを引っ張り出すのを見ながら、「ずいぶん太っていますね」と問われもしないのに言ってしまいました。すると、彼女はしょんぼりして「やっぱりそうですか」と。詳しく聞くと、かかりつけ動物病院で『太っているので痩せさせるように』と言われたのが、どうしても納得できずにいたとのこと。そこで信頼している犬友さんに相談したところ、相談しやすい獣医師がいるということで今回のお茶の集まりとなった次第のようです。そのワンちゃんは触ってみたりする必要もないくらいの明らかな肥満なのに、何故そんな疑念が湧くのか、動物の健康管理を生業としている者としては不思議で不思議でなりません。
ただ、こういったことは実によくある話で、ディテールの違いはあっても根本となる悩みは同じ相談はよく受けます。一般の飼い主さんは、自分の飼っている以外のワンちゃんの体全体を触ることはまずないですよね。とっても社交的で犬好きの方でも、よそのうちのワンちゃんは、頭やあごの下を撫でるのがせいぜいではないでしょうか。つまり、犬の体つきについては、積極的に犬の体型について勉強しない限り、他のワンちゃんの見た目から得た情報が全てになってしまうわけです。そうすると、ご自分の周りに太めのワンちゃんが多かったり、長毛種が多かったりすると、自分のワンちゃんがかなり太っていたとしても、パッと見たところではそれほどの違和感を感じず、「うちの子は他の子と変わらない、標準体型」と思い込むことに至ってしまうのは無理からぬことです。

セカンドオピニオン

人の場合、幼児期は親御さんが自分の育ってきた過程や自分の他のお子さんと比べたり、節目節目での健診があったり、母子手帳の成長グラフに記入したり、大人になれば学校や職場での健康診断があったりと、自分でもだいたい分かるし、多くの第三者の目でのチェックも入ります。犬の場合は、ほとんどの飼い主さんに経験からくる目安もなければ、ましてや公的なチェックなんて全くありません。唯一、客観的な判断をしてくれるチャンスが動物病院での健康診断となります。(動物病院では健康という尺度で判断します。コンテストの基準とは差異がある場合があります)
動物病院での指摘を、『否』と思ったとき、さてどうしますか? 獣医師と言えど人の子です、間違えることもあるでしょう。そんなときはセカンドオピニオンを求めることは『有り』です。あくまでセカンドオピニオン(=二番目の意見)ですよ。自分の思った通りのことを言ってくれる動物病院を果てしなく探すゲームではありません。

冷静な聞く耳

動物病院での指摘に納得できなかった場合、本やネットを駆使してご自分で情報収集される飼い主さん、きっと多いことでしょう。これ自体は、大変いいことだと思います。ただ、客観的な事実に目を向けず、自分の都合のいいように情報を読み違える方もまれに見受けられます。例えばネットで情報収集して、「この犬種は**〜**sが標準だわ、うちの子の体重はこの範囲に入っている、ああ安心」と思っている飼い主さん、ちっとも安心じゃありませんよ。図鑑などに出ている純血種の体重の範囲は、その犬種の理想的な体型を満たした上でその範囲の体重であるという意味です。体重だけが範囲に納まっていてもそれは体型を保障することではないことは、小柄なおでぶさんや大柄なガリガリさんがいることを思い浮かべてくだされば意味は理解していただけると思います。

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ワンちゃんの健康などに関わることについて、かかりつけ獣医師から言われたことが納得できなかった場合、セカンドオピニオンまでなら求めることは妥当でしょう。が、否定することに凝り固まってしまうと愛犬にとって不利益となる場合があります。指摘されたことを一旦理解し受け入れてみる、そこからでないと問題が解決できないことをちょっと心に留めておいていただければと思います。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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