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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第23話 弱い犬ほどよく吠える?

大したことない人物なのに偉ぶって威張る人のことを指す「弱い犬ほどよく吠える」という諺があります。では、実際によく吠えるのは、どのようなワンちゃんなのでしょう?

お散歩の途中、他のワンちゃんとすれ違う度に吠えつくワンちゃんがいます。それもすれ違いざまというより、すれ違う随分前からキャンキャンと吠え始めます。飼い主のおばあさんは「チビのくせに大きな犬に向かって勇ましいもんだ!」と得意げな表情。その飼い主さんは本当にそう思っているのでしょうか。もしそうだとしたら、散歩しているだけなのに吠えつかれた方のワンちゃんと飼い主さんはたまったものではありません。また、町中なのでご近所迷惑でもあります。それとも、いつもいつも吠えてしまうワンちゃんに手を焼いて、ワンちゃんに対して皮肉のつもりで言ったひとことでしょうか。

勇ましいから吠えるのか

子犬の頃に社会化が十分になされず他の犬との関わり方がよく分からないまま育ったワンちゃんは、他の犬など(つまりあまりよく知らないもの)に対して恐怖心を抱くことがあります。そのようなワンちゃんが他のワンちゃんに出会うと、恐怖のあまり「怖い、怖い」「あっちに行って」「あっちに行って」と吠え続けます。(飼い主さんの気持ちからすれば、ワンワンと騒ぎ立てるより、おとなしくして相手をやり過ごせばいいのにと思いますよね。でも、ワンちゃんはそうは考えてくれないようです)
このように他の犬に吠えつく状態を「勇ましい」などと思って放置しておくのは、公共の迷惑だけでなく当のワンちゃんの精神にとっても望ましいことではありません。飼い主さんが適切な対応をしないため、ワンちゃんが吠えても恐怖の対象から離れられないような場合、切羽つまったワンちゃんは相手に対して攻撃(咬みつき)するようになります。さらに、恐怖心を理解せず、怖がって吠えていることに対して何の配慮もせず放置し続けると、ワンちゃんは吠えることなくいきなり咬みつくようになります。
いきなり咬みつくような状態というのは、ワンちゃんが心に異常をきたし始めている状態と言えます。

叱っても逆効果

では、このような場合、どういう対応をすればいいのでしょう。まず、その場で「いけない」あるいは「ノー」と叱って、吠えるのを制止しようとしても効果がありません。何しろワンちゃんは怖くて仕方ないのです。叱られたって怖いのは止められません。例えばご自分がゾンビに囲まれたとしたら、きっと「キャー」「キャー」と叫び声を出してしまいますよね。そんな時「静かに」と叱られても、おとなしくできるものではありませんよね。

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恐怖にさらさない

このように恐怖でワンちゃんが吠えてしまうような時は、まず大事なのは、愛犬が恐怖を感じるような場から速やかに退散することです。ワンちゃんの心情を思いやれば、叱っても問題解決にならないのは前述の通りです。ですので、キャンキャン吠え始めたら、くどくど叱って制止しようとはせず、対象のワンちゃんから素早く離れてください。出会ってしまったら速やかに去るのがポイント。
散歩中は、飼い主さんは少し先まで注意して、苦手なワンちゃんとすれ違うような場合は愛犬がそのワンちゃんに気付く前に、駐車場など広い場所に退避するとか、脇道にそれるとか近距離ですれ違うのを避ける工夫をしてください。
日頃の行動パーターンからいつも同じ場所で同じワンちゃんに吠えつくのが分かっている場合は、散歩コースや時間帯を変えて、そもそも相手に出会わないようにするといいでしょう。

その場で慣らそうとするのは無謀

恐怖心を克服させようとして、相手側のワンちゃんに無理に近づけるのは双方にとって危険です。恐怖がマックスになった時、愛犬は相手のワンちゃんを咬んでしまうかもしれません。恐怖心を持ってしまっている場合は、いくつかの段階に分けて徐々に慣らしていって克服できるものです。無理に近づけても、自然に克服できるというものではありません。方法を間違えると、精神に異常をきたしてしまう場合があります。
対策を講ずるとき、キャンキャン吠える原因が恐怖であるかどうか確かめる必要はありません。原因が何であれ、吠える状況を作らないことは意義があります。

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恐怖心というのは用心深さと表裏をなすものです。自然のなかで生きていくのに大切なものです。犬は人に比べて恐怖心を強く持つ生き物と言われています。そこのところをきちんと理解して適切な対応を取らないと、愛犬はいつまでもキャンキャンと吠え続けなくてはならなくなります。犬が吠え続けるのは怖さの現れ、そう「弱い犬ほどよく吠える」んです。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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