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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話 第24話 愛犬は家族に似てくる

一緒に暮らすうちに、愛犬と飼い主さんがだんだん似てくる、そんな話よく聞きますよね。それは見た目のことだけではないのです。

知り合いのお宅にお茶に呼ばれてお邪魔しました。その日はご主人がお休みだったようで、ご主人がお茶やお菓子を出してもてなしてくださったんですが…。その知人、少々声は大きいものの朗らかで楽しいひとなんですが、なぜかご主人にはやたら細かい。紅茶を出してくれたら、「そのカップじゃないのに」から始まり、お砂糖やレモンのスライス等々について細かいダメ出し。そしてお茶請けのカステラのお皿を奥さんの前に置いたとき、カステラが倒れてしまい、それをご主人が立てようと手を伸ばしたら「触らないで!」とご主人の右手をぴしゃりと叩きました。ご主人の右手には包帯が巻かれていました。
「ご主人、手に包帯巻いていたけど大丈夫?」と聞いてみたところ、「この子が噛んだのよ。だいぶ血も出ちゃったけど、大丈夫よ。なんでかしら、この子、お父さんのことだけよく噛むのよね」と、ワンちゃんがご主人をよく噛むことをほとんど気にはしていない風に話されました。おやおや、血が出るほど噛むというのは大丈夫なことではありませんよ。

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家族はお手本

ワンちゃんの行動を見ていると、そのお宅の家族の様子が垣間見えてくることがよくあります。
人は家族というコミュニティの他に、会社や学校、地域や趣味のサークル等々、いくつものコミュニティに属しています。それに引き換え犬、日本の家庭で飼育されているほとんどの飼い犬は、属しているコミュニティは飼い主さんの家族に限られます。つまり人はいろいろなコミュニティから直接教えられたり見聞きしたりして行動の仕方を学びますが、犬の場合は、家族の行動だけがお手本となります。犬の行動はある意味飼い主さん家族のやり方を、見たまま聞いたままと言えるのです。

犬は群れで暮らすのでは?

犬は群れ社会なので家族を群れとして順位を付けるという説を聞いたことがあるかと思います。しかし、近年の研究では犬は飼い主家族を群れと認めず、飼い主家族は自分の家族であると受け止めているという説があります。
「あら、でも、我が家ではワンちゃんが末っ子との順位逆転を狙って絶えず『ワンワン』吠えてるんだけど」と思われている飼い主さん、いらっしゃるでしょう。では伺います。あなたはご家族の中で家族間の順位を付けていますか? 明治時代の家長制度のころならいざ知らず、家族の中で明確な順位があるご家庭が今もあるのでしょうか。一家の大黒柱としてお父さんを立てているご家庭は多いと思いますが、お父さんが箸をつけるまで他の家族は箸をつけないといった順位付けを明確にする約束を厳守していますか。もしもそのようにしていたとしても、残業の時は先に食べてしまうという例外も多いと思います。お父さんを立てるのは家族の気持ちの問題で、順位とは別物なのです。なので、そもそも無い順位について、ワンちゃんが順位を上げようとしていると考えるのはちょっと的外れですね。

なぜ? 繰り広げられる攻防戦

ではなぜ、ワンちゃんは末っ子ちゃんに、「ワンワン」と喧嘩を売るように、いつも吠えるのでしょう? ここで、ちょっと振り返っていただきたたいのが、末っ子ちゃんに対する他の家族の対応です。例えばお母さんは末っ子ちゃんに、朝は「早く起きなさい」「朝ごはん早く食べちゃいなさい」帰宅したら「手を洗いなさい」「宿題やってしまいなさい」「ゲームばかりしないの」…、このように常に指示を出し続けていませんか。ワンちゃんはこの様子を見て学習するのです。『末っ子にはいろいろ指示してやらないといけないのだな』と。末っ子ちゃんが成長して反抗期も過ぎると、ワンちゃんも落ち着いてきます。お母さんがそれほど口やかましく指示を出すこともなくなったのをワンちゃんがマネしているとは思えませんか。

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ここで冒頭に話を戻します。ご主人を咬んでしまうワンちゃんは、奥さんのやり方をマネしているのかもしれません。もちろん犬(に限らず全ての動物)の行動はいろいろな因子が関係して起こるので、ひとつの因子のみを原因として特定することは適当でないかもしれません。ただ、自分の大きさの何倍もあるご主人を咬まなければならないのは、ワンちゃんにとってはかなりのストレスです。そのような無駄なストレスを減らす可能性が高いと考えられますので、ご家族は仲良く穏やかに暮らしていただけたらと思います。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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