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ご近所獣医師田邊弘子のよもやま話

第26話 リードは決して放さぬように

お散歩、そぞろ歩きとも言い、のんびり歩くことをイメージしますね。愛犬との散歩は気持ちはのんびりでも、しっかり掴んでおかなければならないポイントがあります。

ある日の夕方、家路を急いでおりました。住宅街の中の道ですが、駅からさほど離れていないこともあり、比較的交通量の多い時間帯でした。歩行者だけではなく、自動車や自転車も走っている中、それらをすり抜けるように前方から猛ダッシュで1匹のリードを付けたままのワンちゃんがやって来ました。遠く向こうに、飼い主さんと思しきおじいさんがのんびり歩いてきます。遠目に見るからでしょうか、捕まえる気迫は全く感じられません。もしかしたら、そういう気配を出したら、ワンちゃんが絶対に戻って来ないという経験があり、あえて消しているのでしょうか。それにしても、のんびりし過ぎです。このままじゃ、私が捕まえることになるのかしら? そのワンちゃんの性格(攻撃性)などが分からないので、ちょっとヤダなぁ…。

捕まえたとしたら

まず、皆様にお伝えしたいのは、走っている犬を捕まえるのは『かなり危険な行為』であるということ。
捕獲者側の危険として、犬が楽しくて走り回っている場合なら、捕まえられたことで楽しみを取られるわけですから、『なんで邪魔するんだよぉ』と怒って攻撃してくるかもしれませんし、恐怖から逃げるために走っている場合は、突然捕まえられれば恐怖はマックスに達し、『窮鼠猫を咬む』状態で攻撃してくる可能性大です。
犬側の危険として、トップスピードで走っているとき、リードを踏まれたりすると首(ハーネスなら胴)に急激に大きな負荷がかかり負傷したり、体を強く押し倒されたり、尾を掴まれ引っ張ったりされるのも犬が負傷する原因となります。
善意で捕獲しても、自分がケガをしてしまうのはバカらしいです。また、犬にケガをさせてしまったらそれは犬にとってはかわいそうなことですし、その犬の飼い主さんと面倒なことに発展しかねません。

捕まえなかったとしたら

では、そのワンちゃんをそのままにしておけばよかったのでしょうか。人や自転車はそこそこ行き来してますし、自動車も走っています。放っておいたら自動車や自転車にはねられてしまうかもしれません。反対に、そのワンちゃんに驚いて人が転んでしまうかもしれませんし、避けきれず自転車が転倒してしまうかもしれません。転倒した人や自転車が、走る自動車の方に倒れたら、それこそ大惨事になってしまいます。
そのような事故が起こらなかったとしても、そのワンちゃんは好き勝手に走っているうちに迷子になり、ついには飼い主さんの元に帰れなくなってしまうかもしれません。

戻って来るからいいの

そんなこんなを深く考える間もなく、その犬はどんどんやってきます。ま、ここは私が捕まえるしかないでしょう。一般の方より、犬の扱いに慣れていますしね。
「待て」と声をかけてみたところ、「待て」の意味は分かっていないようでしたが、声をかけてきた人間に興味を持ったようで、私の方にゆっくり近寄ってきました。が、手の届く範囲には近づこうとはしません。犬の関心を引きながら寄ったり離れたりを繰り返すうちに、リードの端っこに近づくことができたので、それを踏んで「御用!」と相成りました。その捕り物の最中、飼い主のおじいさんはちょっと離れたところから、高見の見物、終始省エネモード。そのおじいさんのところへ、ワンちゃんを引いて行くと、おじいさんを見つけたワンちゃんは喜んで駆け寄っていきました。

外では絶対にリードを付ける

飼い主のおじいさんは、たとえリードを放しても、最後には自分のところに戻って来る自信があったのかもしれません。でも、飼い主さんの手からリードが離れた瞬間から、愛犬にも周囲の人へも前述したようにたくさんの危険が降りかかってくるのです。今まで大丈夫だったからと言って、次も絶対大丈夫という保証はありません。

現在、日本でワンちゃんを家の外に出すときは原則リードを付けることが義務(※)となっています。飼い主さんはそのリードをしっかり握って決して放してはいけません。
適正な方法で犬にリードを付け、犬の行動をコントロールすることは犬の自由を侵害していることにはなりません。大切な人と手と手をつなぐように、愛犬につながるリードはしっかり握って決して放さないでください。

※「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準が定められています。詳しくは環境省のホームページにてご確認ください。

田邊弘子
日本大学卒業。動物病院での勤務を経て、現在ダイレクトワンの明るい相談窓口として活躍中。犬の食事やしつけに関して一般の人にわかりやすく伝えようとこのコーナーを担当することに。「みなさんと同じ目線でワンちゃんと楽しく暮らせる情報をお届けします」と意気込みを語る。

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